建設業の人手不足対策とは?4つの柱と組み合わせ方の判断基準

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2026/09/30

建設業の人手不足対策とは?4つの柱と組み合わせ方の判断基準

建設業の人手不足対策は、処遇改善・外国人材の受け入れ・人材育成・DX/ICT活用の4つに整理できます。重要なのはどれか一つを選ぶことではなく、自社の状況に応じてどう組み合わせ、どれから着手するかを判断することです。この記事では、4つの対策それぞれの特徴を比較したうえで、自社がまず何に手をつけるべきかを判断できる基準を示します。

建設業の人手不足はどこまで深刻か(データで確認)

結論から言うと、建設業の人手不足は「なんとなく厳しい」ではなく、数字で裏付けられた構造的な問題です。総務省「労働力調査」を基に国土交通省がまとめたデータによると、2024年の建設業就業者数は477万人で、ピークだった1997年の685万人から約3割減少しています。所長や現場管理者が「昔より応募が来ない」と感じているのは、感覚ではなく実態です。

年齢構成を見るとさらに深刻さが分かります。同調査によると、建設業就業者のうち55歳以上が36.7%を占める一方、29歳以下は11.7%にとどまります。技能者(現場で施工技術を持つ作業員)数も平成22年の331万人から令和6年には300万人まで減少しており、60歳以上の技能者が全体の約4分の1(25.8%)を占める状況です(国土交通省「建設業を巡る現状と課題」等)。10年後にはこの層の多くが引退期を迎えるため、今のうちに次の担い手を確保できるかどうかで、現場の存続が左右されます。

採用の難しさは求人倍率にも表れています。厚生労働省「一般職業紹介状況(職業安定業務統計)」によると、2024年の建設躯体工事従事者の有効求人倍率は年間平均で9倍台に達しており、全職業平均(1倍台前半)を大きく上回ります。型枠大工や鉄筋工を1人採用しようとしても応募が集まらず募集を出し続けているという状況は、この求人倍率の高さがそのまま現場の実感になっていると言えます。経営者にとっては、待っていれば人が集まる状況ではなく、処遇や採用の仕組みそのものを見直す必要があるという判断材料になります。

なぜ建設業で人手不足が解消しないのか(原因を3つに整理)

結論として、建設業の人手不足は一つの原因ではなく、高齢化・待遇・イメージという3つの要因が絡み合って続いています。それぞれを分けて見ることで、自社がどこに手を打つべきかが見えてきます。

高齢化と若手離れ

前章で見た通り、55歳以上が36.7%を占める一方で29歳以下は11.7%にとどまり、若手の入職が高齢者の引退ペースに追いついていません。若手が定着しない現場では、新人が「この会社に将来像を描けるか」を早い段階で見極めて離れていく傾向があります。入社1〜3年目の社員が、先輩の年齢構成を見て「10年後の自分」を想像できず、他業種に転職するケースは珍しくありません。

労働環境・待遇の課題

建設業は他産業に比べて長時間労働になりやすく、休日も現場や工種によって不安定になりがちです。給与水準や休日日数が同世代の他業種と見劣りする場合、採用の入口で選ばれない要因になります。週休2日を確保できるか、残業を減らせるかは、求人票を出す前に自社で点検すべき項目です。

3Kイメージと技術継承の難しさ

建設業には「きつい・汚い・危険」を指す3Kという古いイメージが根強く残り、求人段階で敬遠される一因になっています。加えて、熟練職人の技術は口頭やOJT(実務を通じた教育)に頼りがちで、マニュアル化が進んでいない現場が多く、技術継承そのものが属人化しています。ベテランが引退する前に技術を形式知化できるかどうかが、今後の現場力を左右します。

2024年問題とは?残業に頼った工程管理ができなくなる

結論として、2024年問題は「残業に頼った工程管理ができなくなる」問題です。自社の人員計画に直接影響します。

2024年問題とは、働き方改革関連法による時間外労働の上限規制が、5年間の猶予期間を経て2024年4月から建設業にも適用されたことを指します。原則として月45時間・年360時間が上限となり、特別条項を結んでも年720時間、単月では休日労働を含めて100時間未満、複数月平均でも80時間以内に収める必要があります(上限を超えられる特例の適用は年6回まで)。

これまで繁忙期に残業でしのいでいた工程は、規制違反を避けるために人員を増やすか、工期・施工方法を見直すかのどちらかを選ぶ必要が出てきます。少ない人数のまま従来通りの働かせ方を続けることが、制度上できなくなったということです。

2025年問題とは?ベテランが一斉に引退する

結論として、2025年問題は「ベテランが一斉にいなくなる」問題です。2030年問題とも呼ばれ、建設業界ではおおむね同じ文脈で使われます。

2025年問題とは、団塊の世代が2025年に75歳以上の後期高齢者となり、社会全体で労働力人口の減少が加速することを指します。建設業では60歳以上の技能者が全体の約4分の1を占めるため、この層の引退が本格化すると、現場を回す人数そのものが不足する事態が現実味を帯びます。

所長や経営者にとっては、2024年問題の残業規制で「働かせ方」が制約される一方、2025年問題の引退で「働き手の数」も減るという、二つの圧力が同時に来ている状況として理解しておく必要があります。

対策①処遇改善で「辞めない・選ばれる」建設会社にする

処遇改善で見るべき打ち手は、週休二日制・給与体系・福利厚生の3つです。週休二日制は、国土交通省の調査で直轄工事の週休2日実施率が2022年度に99.6%まで上がった一方、建設業全体では「4週6休程度」が最多で、2024年度の4週8休取得率は技術者28.6%・技能者29.4%にとどまります(国土交通省調査)。公共工事の受注比率が高い会社ほど発注者側の休日体制に合わせやすく、着手しやすい対策といえます。給与体系は、経験年数や保有資格に応じた昇給ルールを明文化し、建設キャリアアップシステム(CCUS、技能者の資格・経験を業界横断で登録する仕組み)のレベル別評価と連動させる方法が考えられます。福利厚生は資格取得費用の補助や住宅手当など、離職理由が賃金か休日かによって優先順位を変えて検討します。

対策②外国人材の受け入れで人手を補う

外国人材の受け入れは、単発の人手補充ではなく生活支援まで含めた体制づくりが前提になります。建設分野で使われる特定技能制度(一定の技能と日本語能力を持つ外国人に就労を認める在留資格)は、2024年12月末時点で1号38,365人・2号213人が就労しており、今後5年間で最大8万人の受け入れが見込まれています(国土交通省・出入国在留管理庁)。建設分野は他業種と異なり、特定技能と特定活動(技能実習の修了者等が一時的に就労を継続するために用いる在留資格)で働く外国人労働者の合計数が、自社の常勤職員数を超えられないという上限があります。

受け入れには住居確保や生活オリエンテーションなどの生活支援、安全教育や日本語での指示伝達といった言語対応が必要で、登録支援機関(出入国在留管理庁の登録を受け、生活支援業務を企業に代わって行う機関)に委託する方法もあります。通年で一定量の工事があり教育・支援体制を組める会社は検討対象になりますが、単発工事中心で体制構築が難しい場合は他の対策から着手するのが現実的です。

対策③人材育成でベテランの技術を次世代へ引き継ぐ

人材育成で問われるのは、熟練技能者の勘やコツをどう組織の資産に変えるかです。OJT(実際の業務を通じた教育)だけに頼ると、教える側の負担が偏り、退職と同時に技術が失われます。対策としては、作業手順を動画やチェックリストで標準化する、技能検定や施工管理技士などの資格取得を受検料補助や社内評価で後押しする、CCUSのレベル別評価を処遇に連動させる、といった方法があります。若手とベテランを固定ペアにして日常的に技術を渡す仕組みも有効です。

ベテラン層が厚く数年内の退職が見込まれる現場では育成の優先度が高く、逆に若手中心の組織では基礎教育の仕組み化を先に整える判断になります。

対策④DX・ICT活用で少ない人数でも回る現場にする

DX・ICT活用は、少ない人数で工程を回すための手段であり、まず自社の業務のどこに手間がかかっているかを見極める必要があります。施工管理アプリで日報や写真管理、工程共有を効率化すれば、現場と事務所の往復を減らせます。BIM/CIM(設計・施工・維持管理の情報を3次元モデルで一元管理する手法)は手戻りを減らす効果があり、ドローンによる測量・出来形管理は人手のかかる作業を省力化します。国土交通省の調査では、ICT土工(ICT建機やドローン測量など情報通信技術を活用した土工事)の現場で作業時間が平均23%短縮し、直轄工事全体では2015年比で21%の生産性向上が確認されています(令和3年度時点、国土交通省直轄工事におけるICT活用工事実施率は約87%、国土交通省i-Construction)。

測量や土工事が多い現場では効果が出やすい一方、小規模・単発工事中心では投資回収が見えにくく、既存の管理システムが使われていない場合はツール選定より運用ルールの見直しが先に必要になります。

建設業の人手不足対策、4つの柱をどう組み合わせるか(比較表)

処遇改善・外国人材・人材育成・DXは、どれか一つを選ぶものではなく、自社の課題に応じて組み合わせるものです。それぞれ即効性やコストのかかり方が異なるため、まず特性を整理してから自社に当てはめる必要があります。下の表は、4つの対策を「どれくらい早く効くか」「何にコストがかかるか」という観点で比較したものです。

対策

即効性

コストの掛かり方

効果が出るまでの期間

向いている会社の状況

処遇改善

低(じわじわ効く)

人件費・福利厚生費が継続的に発生

中〜長期(半年〜数年)

採用はできるが定着率が低い

外国人材の受け入れ

中〜高(手続き後は即戦力)

受け入れ体制の整備費・教育コスト

短〜中期(数カ月〜)

今すぐ現場の頭数が足りない

人材育成

低

教育時間・OJT担当者の工数

長期(数年単位)

ベテラン依存が強く技術継承ができていない

DX・ICT活用

中

初期導入費・運用の定着コスト

短〜中期(導入後数カ月〜)

管理業務に時間を取られ現場が回っていない

処遇改善と人材育成は効果が出るまで時間がかかる一方、外国人材とDXは比較的早く効果を実感しやすい対策です。この違いを踏まえて、緊急度の高い課題から手をつけることが現実的な進め方になります。

自社はどの対策から着手すべきか(判断基準)

どの対策を優先すべきかは、自社が今どの課題に直面しているかで決まります。以下の基準に自社の状況を当てはめて、着手の優先順位を判断してください。

  • 今すぐ人手が足りず現場が止まりそうな場合は、外国人材の受け入れを優先する

  • 採用はできているが定着しない場合は、処遇改善を優先する

  • ベテラン数名に技術と判断が偏り、退職リスクが高い場合は、人材育成を優先する

  • 現場管理者が書類作成や報告業務に追われて現場を見る時間が取れない場合は、DX・ICT活用を優先する

  • 複数の課題が同時に起きている場合は、最も緊急度の高い一つに着手しつつ、他の対策を並行して準備する

例えば、若手は採用できているのに数年で辞めてしまう会社であれば、まず処遇改善に着手しながら、並行して技術継承の仕組みづくりを進めるという組み合わせが考えられます。逆に、次の工事の人員が確保できず稼働が止まりかねない状況であれば、外国人材の受け入れ手続きを先に動かし、育成や処遇の見直しは中期的な課題として位置づける、という判断もあり得ます。自社の状況を一つに絞り込めない場合は、緊急度と対応にかかる期間の両方を基準に優先順位をつけることが重要です。

まとめ

建設業の人手不足対策には、処遇改善・外国人材・人材育成・DXの4つの柱があり、それぞれ即効性や効果が出るまでの期間が異なります。自社の緊急度に応じて優先順位をつけ、複数の対策を組み合わせて進めることが現実的な解決につながります。

よくある質問

Q1. 建設業の人手不足はいつ頃解消されますか?
短期的な解消は見込みにくいと考えられます。建設業就業者は55歳以上が3割超を占める一方、29歳以下は1割程度にとどまり、今後数年で大量退職が見込まれています。処遇改善や人材育成の効果が出るまでには数年単位の時間がかかるため、まずは自社に必要な担い手数を見積もり、複数の対策を並行して進めることが現実的です。

Q2. 中小の建設会社でも外国人材の受け入れは可能ですか?
可能ですが、受け入れ体制の整備が前提になります。特定技能制度を使う場合、住居確保や生活支援、日本語での安全教育など、企業側に一定の体制が求められます。自社だけで体制を整えるのが難しい場合は、登録支援機関に生活支援業務を委託する方法もあります。通年で一定量の工事があり、教育担当者を割ける会社から検討するのが現実的です。

Q3. DXツールを導入しても定着しない場合はどうすればいいですか?
ツールの選定よりも先に、運用ルールと現場への浸透プロセスを見直す必要があります。導入自体が目的化し、現場の入力・運用ルールが曖昧なまま使われなくなるケースは珍しくありません。まずは自社のどの業務にどれだけ時間がかかっているかを洗い出し、小さな範囲で運用を固めてから対象を広げる進め方が効果的です。

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